[著者] 島田士郎
交渉は生身の人間がやることだから、理屈を通すだけでは角が立つ。さまざまな数値データを踏まえたうえで、相手の利益に繋がることを粘り強く説得し、感情的な対立を避けたほうが賢明である。双方向のコミュニケーションを心がけることだ。
そうは言っても人情に溺れたら、時代の流れを見誤りかねない。どんなに親しい間柄でもビジネスはビジネスと割り切って、厳しい決断を下さなければならないときもある。それでいて人間関係を断ち切らないようにするのが、交渉の複雑で難しいところである。
実際に営業マンは、毎日のように交渉を繰り返している。お客さまに商品やサービスを売り込むだけでなく、さまざまなトラブルやクレームに対処したり、取引条件や納期の変更にスピーディな判断を求められ、当事者として結論を導かなければならない。常に交渉の矢面に立たされる。どんなに経験を積み重ねていても、ひと昔前のように人間関係をベースにした強い絆だけでは、乗り越えられない交渉が増えているから厄介だ。
それでは、どうすれば良いのだろうか? どこへ行っても通用する交渉力を身につけて、周囲が認めざるを得ない成果をあげるのが一番の早道だ。
そのためには人間の心の動きを理解して、状況に応じたプレゼンテーションを展開することが必要になる。相手を知ることも大事だけれど、それ以上に自分のパーソナリティを把握して、縦横無尽にコントロールする力を蓄えることが重要だ。
強い相手と交渉するときも、弱い相手と交渉するときも、臨機応変に振る舞って、最後の詰めを誤らないことである。信念を持つだけでは、交渉は行き詰まる。守らなければならない価値を心に刻み込み、フレキシビリティを充分に発揮することだ。
この本の中には、交渉に強い営業マンになるヒントが溢れている。
(「プロローグ」より抜粋)
定価:660円(本体600円+税10%)